ブラジルの大都市といえば、サンパウロやリオデジャネイロが真っ先に思いつくでしょう。しかし、これらの街は意外にも首都ではないのです。
ブラジルの首都は、ブラジル中央高原の荒野に位置するブラジリア。実は、1987年に世界遺産に登録された計画都市としても知られています。
今回はブラジリアのさまざまな観光スポットを、筆者が直接訪問して調査してきました。本記事にて、首都のユニークさをたっぷりとお伝えします。
ブラジルの首都ブラジリアは、1960年にブラジル中央高原の荒野に誕生した計画都市です。
都市設計は、オスカー・ニーマイヤー氏とルシオ・コスタ氏というブラジル建築界の巨匠たちが手掛け、「パイロット・プラン」というレイアウトに基づいて街を整備。そして、この「パイロット・プラン」という名前の通り、ブラジリアの街はなんとジェット機のような形をしているのです。
このユニークさが評価され、1987年には街全体が世界遺産に登録。官公庁、大使館、商業施設、住宅、公園といったエリアがきちんと区画され、交通渋滞や大気汚染を防ぐために自動車専用道路や歩行者用道が整備されるなど、持続可能な都市づくりの先駆けとして機能しています。
実際に、ブラジリアは空港からすでに近代的な雰囲気を感じることができます。滑走路も空港内も、さらにはUberの待ち乗り場まで、デザイン性にあふれた空間となっています。そのため、ブラジリアは建築的な視点で観光すると、他の都市とは違った楽しみ方が可能です。
入口に出迎えてくれる巨大な四使徒の像にハンマー型の鐘、支柱の間に張り巡らされた青いステンドグラスに宙を舞う天使たち。何もかもが斬新な王冠型のブラジリア大聖堂(Catedral Metropolitana Nossa Senhora Aparecida)は、まさにブラジリアの象徴です。
オスカー・ニーマイヤー氏の設計により建設され、聖堂内は光の入り具合によってさまざまな顔を見せてくれます。夜のライトアップも必見です。
ブラジリアといえば、オスカー・ニーマイヤー氏設計の国会議事堂(Congresso Nacional)を思い浮かべる人は少なくないでしょう。
上院は保守的な議会として上に閉じた形、下院は人々の声をよく聞き新しいアイデアを出すべき議会として上に開いた形になっています。
このような、議会の性格を形で表現した国会議事堂は、世界で唯一ここだけとも言われています。
外務省(Palácio Itamaraty)も、国会議事堂と同様にオスカー・ニーマイヤー氏によって設計されました。
外観もさることながら、内部の設計が非常に美しく、建築雑誌でもよく特集されているほどです。
オスカー・ニーマイヤー氏設計の最高裁判所(Supremo Tribunal Federal)。
正面には、公正な裁判を意味する「目隠し裁判の像」が置かれています。アトリビュートは少し異なりますが、正義の女神様といったところでしょうか。
大統領府(Palácio do Planalto)と労働戦士の像(Monumento Dois Candangos)もオスカー・ニーマイヤー氏が設計しています。
写真のような労働戦士の像が建つ場所を「三権広場」と呼び、三方を国会議事堂、最高裁判所、大統領府などが囲っています。
ブラジリア建築の父、クビチェック元大統領が眠る墓所兼記念館として有名なクビチェック大統領記念館(Memorial Juscelino Kubischeck)。オスカー・ニーマイヤー氏設計の同館は、クビチェック氏にまつわる数々の記念品や本、写真が展示されており、ブラジリア建築までの歴史を写真とパネルにて見ることができます。
ブラジリア歴史博物館(Museu Histórico de Brasília)には、クビチェック元大統領の顔の石像が埋め込まれています。
ここでは、オスカー・ニーマイヤー氏のブラジリアでの建築を一挙に写真で見ることが可能。そのため「ここは見た、ここはまだ見てない」など、観光スポットの整理にも活用できます。
また、館内に展示されているブラジリア都市計画の設計図では、「パイロット・プラン」のコンセプトに従った街の形を観察することが可能。
区画がジェット機形に整えられ、官公庁エリアや陸軍本部、大使館エリア、バスターミナル、ホテルエリア、ショッピングセンター、住居エリア、公園、道路が整備されていることが、この設計図からはっきりと分かるでしょう。
逆さにしたお椀のような形状が目を引くブラジリア国立美術館(Museu Nacional da República)。オスカー・ニーマイヤー氏設計で、内部は宇宙船のような空間が広がっています。
また、夜は空の闇と水面の暗がりの中にライトアップされた美術館がぽっかりと浮かび上がり、土星のようなシルエットを楽しむこともできます。
ルシオ・コスタ氏設計のテレビ塔(Brasilia TV Tower)は、高さ224メートルの塔で、75メートルの展望台までエレベーターで上がることができます。展望台の入口は多少並びますが、天気が良ければぜひ登ってみて、景色を堪能しましょう。
また、テレビ塔の周りには食べ物の屋台や露店が並んでいるため、小休憩にも良さそうです。
陸軍本部と隣接するドゥキ・ジ・カシアス広場(Praça Duque de Caxias)は、オスカー・ニーマイヤー氏の設計で、市民憩いの場として利用されています。
広場の目の前を走る道路は、広く長く一直線。これは、戦争や事変などの有事が発生し、国際空港が使えなくなった場合の代替滑走路という意味合いを持っているそうです。
ブラジリアは、なぜブラジル中央高原の荒野に新首都として建設されたのか。それはイタリアの聖人、ドン・ボスコ氏の予知夢から始まったとされています。
「南緯15度から20度にある土地に・・・驚くべき豊かさをもたらすだろう」
この夢を信じた当時の政府は、ブラジル中央高原の荒野に新首都を建設するというユートピア構想を発案。そして、「50年の進歩を5年で」というスローガンのもと、ブラジル北部とミナスジェライス州から多くの労働者が移り住み、8年ほどで新首都が整備されました。
ドン・ボスコ聖堂(Santuário São João Bosco)の内部は、美しい青のグラデーションが拡がっています。ブラジリア大聖堂の青とはまた異なる、星降る夜のような、あるいは深海のような青さ。中央の巨大水晶シャンデリア、そして黄金色に灯る美しさを、ぜひその目で実際に見て感動してほしいです。
建都の歴史を刻んだレリーフが、壁一面に飾られているパンテオン(Panteão da Pátria e da Liberdade)。
生々しい壁画を実際に目の前で見ると、その迫力に圧倒されてしまいます。
ポンタ・ド・ラゴ・スル(Pontão do Lago Sul)は、人工的に作られたパラノア湖畔のリゾートビレッジです。
湖に沿って遊歩道が整備されており、レストランやバーが軒を連ねています。ゆっくりとした、南国の雰囲気を味わってみましょう。
昼間と夜の異なる表情を魅せる、ジュセリーノ・クビチェック橋(Juscelino Kubitschek Bridge)。
パラノア湖にかかるスチール製のアーチ橋は、先述のポンタ・ド・ラゴ・スルから眺めることができます。
日中の青空にかかる煌びやかな橋の姿も素敵ですが、夜のライトアップスポットとしてもおすすめです。
協会の設計にも、オスカー・ニーマイヤー氏は携わっています。
写真のファティマの聖母教会(Igreja Nossa Senhora de Fátima)は住宅街の中に佇んでおり、クビチェック元大統領の奥さんが娘の病気回復を願って建てられた教会です。
病気はその後治り、現在は元気に政界にいらっしゃるのだとか。
ブラジリアの教会は、ヨーロッパの教会とは違ったスタイルで新鮮です。ファティマの聖母教会の内部の壁画は、ブラジルのモダニズム運動の著名な画家であるアルフレド・ボルピ氏によるもの。外壁の聖霊柄タイルも必見です。
ジェット機形のブラジリアの中心部には居住エリアは見られませんが、左翼と右翼部分には庶民的なレストランやショップが並んでいます。
したがって、現地ならではの様子を楽しみたい場合には、街の左右を訪れてみると良いでしょう。
ブラジルの首都ブラジリア観光の魅力 | まとめ
建築物も都市設計も、両面で魅力あふれるブラジリア。本記事で紹介してきたように、日中は歴史的な街を知り、夜間はライトアップを楽しむなど、1日中たっぷりと巡ることができます。
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